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【獣医が教える】夏に急増!愛犬を襲う病気と今すぐできる対策とは?

Apr 30,2025 | 小林仁美

暑くなると、人も犬もちょっとしたことで体調を崩しがちですよね。うちの子も毎年、夏が近づくと食欲が落ちたり、だるそうにしていたりして心配になります。実は、夏は犬にとって病気のリスクがとても高い季節。気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。このブログでは、そんな夏に気をつけたい犬の病気や、今日からできる簡単な対策をわかりやすくご紹介します。愛犬と一緒に、元気に夏を乗り切るヒントになれば嬉しいです。

特に注意すべき4つの病気

熱中症

 

夏の代表的なトラブルといえば、やはり熱中症です。特に呼吸が荒くなったり、よだれがいつもより多く出たり、ふらつきや意識がもうろうとするような様子が見られたら要注意。それは体温調節ができず、体に熱がこもってしまっているサインかもしれません。よくある危険なシチュエーションは、真夏の車内に数分間放置されることや、日中のアスファルトの上を歩かせること。犬は人よりも地面に近く、肉球を通じて熱を強く感じてしまいます。予防のためには、早朝や日が沈んだ後の散歩に切り替える、保冷剤入りのクールベストを使う、冷感マットで休ませるなどの工夫が効果的です。「まだ大丈夫」と思っているうちに進行することもあるので、日頃から様子をよく観察し、少しでも違和感を覚えたらすぐに涼しい場所へ避難させましょう。

皮膚病

 

夏になると増えてくるのが、かゆみや赤みなどの皮膚トラブル。湿度が高いこの季節は、汗や皮脂、湿った被毛が原因で雑菌が繁殖しやすくなり、皮膚炎やマラセチア感染などにつながることがあります。特に耳の中や脇の下、指の間など通気性の悪い部分は要注意。愛犬がやたらと掻いたり、舐めたりする様子が見られたら、早めのケアが必要です。日常的にできる予防としては、こまめなブラッシングで通気性を良くすることや、蒸れやすい部分を清潔に保つこと。シャンプー後はしっかり乾かすことも忘れずに。皮膚病は慢性化しやすいため、軽い症状でも油断せず、異変を感じたらすぐに獣医さんに相談するのがおすすめです。

寄生虫感染

 

夏はフィラリアやマダニなどの寄生虫が活発に動き出す季節。特に蚊が媒介するフィラリアは、一度感染すると命に関わることもあるため、しっかりとした予防が欠かせません。マダニも要注意で、草むらや公園などで犬が遊ぶ際にくっつきやすく、感染症を引き起こす可能性があります。最近では温暖化の影響で、以前は寄生虫のリスクが少なかった北海道などの地域でも感染例が増えています。逆に、もともと暑い沖縄などでは、年間を通して注意が必要。地域によって活動時期が異なるため、住んでいる場所やお出かけ先に合わせた対策が大切です。予防薬をきちんと続けることはもちろん、散歩後に体をチェックしたり、草むらを避けるなど、日常のちょっとした意識でリスクを大きく減らすことができます。

夏型胃腸炎

 

暑さで食欲が落ちたり、お腹を壊したりする犬も多いですが、実はそれが「夏型胃腸炎」のサインかもしれません。特に気をつけたいのが、フードの保存状態。湿気や高温で腐敗が進みやすく、知らずに傷んだごはんを食べてしまうと、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。また、水遊びをした後の細菌感染も見逃せません。川や池など、自然の水場には見えない細菌が潜んでおり、飲んでしまったり体に残ったままだと、胃腸に影響が出ることも。実際、「川遊びの翌日に下痢をした柴犬」のケースもありました。対策としては、フードは小分けにして冷暗所に保存する、水遊び後はしっかり体を洗って乾かす、そしていつもと違う様子があればすぐに食事や環境を見直すことが大切です。夏の胃腸はとてもデリケート。日々のちょっとした心配りが、愛犬の元気を守るカギになります。

緊急時の対応マニュアル

もしもの時、慌てずに行動できるかどうかで、その後の結果は大きく変わります。たとえば、夏によくある熱中症。急に呼吸が荒くなったり、ぐったりして動かなくなったら要注意です。まずは涼しい場所へ移動し、体を冷やすことが先決。首の後ろや足の付け根に冷たいタオルを当てて、様子を見ながら水を少しずつ飲ませます。決して無理に水を飲ませたり、氷水を一気に与えるのはNG。落ち着いたら、すぐに病院に電話して、指示を仰ぎましょう。

散歩帰りに、皮膚を舐める回数が増えていたら、それは何かのサインかもしれません。赤くなっていたり、小さな虫がついていたりした場合は、触りすぎないよう注意。とりあえず写真を撮っておくと、獣医さんに説明しやすくなります。症状が軽く見えても、油断せず相談を。

胃腸のトラブルも、夏にはありがちです。食べたものをすぐ吐き出したり、水しか飲まないような様子が見られたら、半日ほど食事を控えて安静にしてみてください。ただ、明らかにぐったりしていたり、血便が出た場合は即病院へ。体調の変化を見逃さないことが大事です。

もし出先で急なトラブルが起きたとき、近くにどこが動物病院か把握していないと困ります。旅行や帰省前には、目的地周辺の動物病院をあらかじめ調べておくだけでも安心感が違います。住所や電話番号をスマホにメモしておくと、いざというときスムーズです。

いつもと違うと感じたら、それは「何かある」サイン。小さな違和感でも、飼い主さんの気づきが命を守るきっかけになります。慌てないための準備を、日頃から少しずつ整えておきましょう。

予防のために今日からできる習慣

エアコンの温度設定、「ちょうどいい」は犬にとって違うかも?

 

人間が「涼しい」と感じる室温でも、犬にとっては暑すぎることがあります。特に小型犬や鼻の短い犬種は熱がこもりやすく、体温調節が苦手。室温は25〜26度を目安にし、湿度は50%前後をキープしましょう。「28度設定+扇風機」は一見良さそうですが、風が直接当たるのを嫌がる犬もいます。サーキュレーターで空気を循環させたり、直射日光を遮る工夫も効果的です。地面近くの空気温度も意識しましょう。 

毛を短くしすぎるのはNG?その子に合った被毛ケアを

 

暑いからといって被毛をバッサリ短くカットしてしまうのは、かえって逆効果になることがあります。犬の毛には断熱材のような役割があり、皮膚を守るクッションのような存在です。とくにダブルコートの犬は、アンダーコートの取りすぎが皮膚トラブルの原因になることも。大事なのは「短くする」より「通気よく整える」こと。プロのトリマーと相談して、その子の体質や生活環境に合わせたスタイルを選ぶのが安心です。 

遊びながら水分補給、氷を使ったアイデアもおすすめ

 

暑さで食欲や水分摂取量が落ちがちな夏。そんな時は、ちょっとした工夫で「水を飲みたくなる環境」を作ってみましょう。氷の中に少量のおやつを凍らせて与えたり、氷の上におもちゃを置いて“氷遊び”させるのも一つの方法。冷たさが気になる子には、ぬるめのスープ(無塩の鶏だしなど)を使うと飲みやすくなります。器を増やして場所ごとに置いておくのも効果的です。 

足裏チェックは毎日のルーティンに

 

真夏のアスファルトは予想以上に熱く、数分歩いただけで肉球がやけどしてしまうことも。散歩前には、道路に手を当てて温度をチェックする習慣をつけましょう。また、散歩後には足裏に小石や砂、草の種が挟まっていないかも見てあげてください。特に指の間は汚れがたまりやすく、放置すると炎症の原因にもなります。足裏用の保湿クリームや、専用の靴も活用できますよ。 

年に一度は“中からチェック”を

 

定期健診は、目に見えない不調を早めに見つけるための大事なチャンス。夏前や春の終わりごろに一度、全身の健康チェックを受けておくと安心です。特に持病のある子やシニア犬は、半年ごとの検診を検討しても良いでしょう。予防接種やフィラリア対策とあわせてスケジュール管理すると、効率よく通えます。病院が苦手な子も、年に1~2回のルーティンとして慣らしていくと負担が減っていきます。

まとめ

夏は、わんちゃんにとって思っている以上に負担のかかる季節です。でも、少しの気づきと工夫で、その負担をぐっと減らすことができます。大切なのは「ちゃんとしてあげなきゃ」と気負いすぎず、「今日できることから少しずつ」やってみること。わんちゃんのしぐさや表情に目を向けながら、無理なく続けられるケアを見つけていきましょう。今年の夏も、愛犬と一緒に穏やかに、心地よく過ごせますように。

#犬の知識 #犬の飼い方
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ペット用品の「実際の暮らしでの使い方」を動画で紹介!飼い主様のリアルな使用シーンや商品の魅力をお届けします。毎週末に本編動画を更新、平日はショート動画やお役立ち情報を配信中。愛犬・愛猫との毎日がもっと楽しくなるヒントが見つかります。🐾
監修する獣医師
小林仁美 獣医師
小林 仁美(獣医師)
  • 卒業:2015年 日本獣医生命科学大学
  • 専門:小動物臨床/外科手術

京都市内の動物病院を経て、2020年よりフリーランス獣医師として活動。地域の動物保護活動ではTNRプログラムを推進。予防医療の啓発を目的とした執筆をライフワークとしている。